都市文化社『苦悩する都市再開発』
大阪駅前再開発事業の評価は真二つに分かれている。「成功」か「失敗」かである。
この事業の実質的推進者である元大阪市都市再開発局長・小寺稔氏は、当然ながらこの事業に最大限の賛辞を送っている。
なるほど約11万平方メートルにものぼる戦災跡地の不法占拠が大半を占める焼跡闇市が、戦後半世紀を経て高層ビルの建ちならぶ見違えるような街なみに変わった。不衛生、乱雑で災害危険の大きい無秩序な市街地が清掃され、健康で安全かつ公共空間の多い近代都市が誕生し、駅前地区は西日本の中心、大阪の玄関口にふさわしいものに変容した。その結果、24万平方メートルにも及ぶ巨大な商業ビルが生まれ、道路用地は従前の2倍に、建物延床面積も5倍にふくれあがった。事業も財政上帳尻を合わせ、固定資産税などの税収が飛躍的に伸びた。
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