自然神秘思想

思想・哲学

「自然神秘思想」は、ルネサンスに再発見された、新プラトン主義やヘルメス学(占星術や錬金術などとも関わる自然哲学・自然学)やユダヤ教神秘思想(カバラ)が、中世以来のキリスト教神秘思想と結合したところに成立した、宗教的な背景をもつ自然思想である。

 

具体的な思想家としては、ルネサンスのパラケルスス、17世紀のバロックの時代のベーメやヘルモントなどの名が挙げられる。内容的には、新プラトン主義的な世界像、創造と転落と回復のパターンで歴史を捉えるキリスト教的な歴史観、ヘルメス思想に基づく自然学などが、自然神秘思想の特徴となっている。

 

「自然神秘思想」は、ドイツでは、「敬虔主義」という名のもとに概括されるプロテスタント思想、正統的な立場から「汎神論的」として非難される思想、「フリー・メーソン」や「黄金薔薇十字団」のような「秘密結社」の思想などのなかに入り込んで、いわゆる「ゲーテ時代」の時代思潮を形成する重要な要素となっている。

 

「自然神秘思想」は、17世紀以降、近代の自然科学の進展とともに、古い自然観として、思想史の表舞台から退くのであるが、近代に対する反省と批判が強まる18世紀の終わりに、再び注目されている。

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