グーテンベルクの印刷術

技術

印刷術、火薬、羅針盤の3つの中でもっとも重要な発明はグーテンベルクの印刷術であり、これにより人類の右肩上がりの発展が始まっているのである。それ以前の歴史においてはギリシャ・ローマ文明から中世の暗黒時代のように、文明や科学技術は発展して失われることを繰り返しており、様々な技術は何度も発明され何度も失われているのである。

人類は文字を用いることにより人間の寿命を超えて、また直接対面する人の枠を超えて、つまり時間と空間を超えて知識を伝えることができるようになり、知識は蓄積され技術は発展するようになったが、媒体として使用される紙は非常に脆弱であり、戦争や火事で簡単に燃え、乱暴に扱えば破れ、水にも弱く、保存状態が悪ければ虫が食い、黄ばみ、インク/墨が薄れ、やがて失われることになる。さらに折角、保管されていても、その内容に対立する人間が意図的に破壊することも多かった(焚書坑儒、アレキサンドリア図書館の破壊など、枚挙に暇がない)。

 

しかし、現代にコンピュータが利用されるまで、紙は人類が使用した媒体の中でもっとも利便なもので、これに代わるものはない。脆弱という欠点を補うには、大量に複写を作り、多数の場所に保管することで、情報の広がりと維持を確保する方法があるが、当然、手作業による写本は数に限りがあり、版木を彫っての木版印刷も版木づくりに手間がかかりすぎるため、長大な書籍には適用しづらかった。

しかし、活字を組み合わせる活版印刷により、印刷は簡便に廉価に実施できるようになり、印刷されるタイトル、量ともに飛躍的に増大したのである。

活字のアイデア自体は昔からあるのだが、漢字圏では字数が膨大なため、活字を作ることの労力が大きすぎて実用的でなく、一方、ヨーロッパでは紙の普及が遅く、中世末期まで羊皮紙が主流であり、印刷が発達しなかった。ちょうど、ヨーロッパでも紙が普及し始めたため、活版印刷が実用的になったのである。このように発明は単独に誰かが発明するというより、必要性(需要)ができ、それを支える技術・供給が整って初めて実用化できるのである。

 

グーテンベルクの印刷術以降、知識が完全に失われることはなくなり、知識は常に広がり、蓄積され、人類は常に巨人の肩に乗って、新たな高みを目指すことができたのである。また、ヨーロッパに限って言えば、印刷術により聖書が一般人の手元にも渡り、宗教改革に繋がっている点が重要である。

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