12世紀のルネサンス

文化

12世紀のルネサンスは、西欧世界がイスラム文明と接触・遭遇し、その成果を取り入れ、消化し、その後の知的離陸の基盤とした大変革期であり、それなくして14世紀のルネサンスはなかったと考えられる。この時期にイスラムを通じてヨーロッパが学んだのは、独創的なイスラム固有の学問だけではなく、ユークリッド幾何学、プトレマイオスの天動説、ヒポクラテスやガレノスの医学、アリストテレスの哲学などのギリシャ文化やヘレニズム文化の優れた内容であった。これらのギリシャ・ヘレニズム文明は、ローマを経て西欧に継承されていたのではなく、12世紀にビザンティン、アレクサンドリアを通じて伝えられたものである。アラビアのイスラム文化の中心はバグダードに移っていたが、エジプトのアレクサンドリアはプトレマイオス朝時代のムセイオン以来の学術の伝統はイスラム教徒にも継承されていた。

これらのイスラム文化、ギリシャ・ヘレニズム文化の流入に刺激され、12世紀ごろのイタリアを初めとして中世ヨーロッパの大学が誕生する。

中世ヨーロッパのキリスト教文明は、イスラム教を異教として激しく排除し、レコンキスタや十字軍運動のような敵対行動もあったが、近接するイベリア半島のトレドや南イタリア・シチリアのパレルモなどでは早くからイスラム文明の影響を受け、学問が盛んであった。トレドにもたらされた古代ギリシャの文献はイスラム世界の文化の中心地バグダードの知恵の館でギリシャ語からアラビア語に翻訳されたものであり、それがトレドの翻訳学校でラテン語に翻訳され、ヨーロッパ各地にもたらされたのであった。十字軍運動はむしろイスラム世界との接触が強まる契機となり、12世紀ごろからイスラム文化とイスラム文化を通じてギリシャの古典古代の学問を取り入れる動きが活発になった。それが12世紀ルネサンスといわれる文化運動である。

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