昭和63年5月放送『芸を語る 桂枝雀 〜話芸と一人芝居〜』
(米朝)
「おまえさん、そのぉ、舞台でやらせてもらうときには、少々オーバーでもいいかわからんけどね、テレビなんかでこうしてやらせてもらう場合、お前のその表情なりアクションなりはどうしてもはみ出る。あの変な顔かて、遠くでちょっと離れて見りゃこそね、私に害はないと思って見てはる場合はまだ安心できますけどね、こない近くでこんなアップで映されると、皆さん決してあれは心よい顔ではない。だから抑えなさい」
(枝雀)
「とにかく動けるだけ動いてですね、色んな意味で。そして、おそらく体力的にですね、あのぉ、そう動けなくなると思います。ひとつは体力的にね。そうするとだんだん治まってきて、まぁ体力的にというよりも、うーん、体力がそうなってくると、おそらく省くものは省こう、これはいらないんじゃないか、あれはいらないんじゃないか、とだんだん動きも少なくなり、言葉数も少なくなって、ついにはじぃっと座っていて何も言わずに、にこっと笑って座っている。皆さん方もにこっと座って、お笑いにならなくても、こう顔がほころんでいればそれでいいわけです」
(聞き手)
「それはいつ頃のお話になりそうですか」
(枝雀)
「今生は無理だと思います。えぇ、ですから、次の次の生ぐらいかと思うんですが。まぁ、生まれ変わり死に変わりこんなことをやらせてもらっておれば、そないに急ぐことはないと思います。きっとやります」
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