イラクでの 外務省職員殺害事件(前編)

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平成15年11月29日午前10時過ぎ、奥参事官及び井ノ上書記官は、ティクリート1で開催予定の米軍民生部門主催「国際機関/NGO復興会議」2への出席のため、大使館のイラク人現地職員のジョルジスー・スライマン・ズーラ運転手の運転する館用車により、陸路ティクリートに向け、バグダッドの日本大使館を出発した。

 

奥参事官及び井ノ上書記官の両名は、我が国の対イラク復興支援の実施等に携わっており、その業務の一環として会議主催者の招きに応じて本件会議に出席することとしたものである。なお、ジョルジース運転手は現地の交通事情に通じ、その豊富な運転経験で信頼が厚かった。

 

移動に使用された車両は、大使館館用車で四輪駆動車のトヨタ・ランドクルーザー(99年製 黒色 レバノン外交団登録ナンバー(D―242―10))であった。 ただし、現下のイラクでは安全対策上ナンバーが外されている車輌も多く、現地大使館としても大使館館用車であることを隠した方が安全性が高いとの判断からナンバープレートは前後とも外し、車内の座席の下に保管していた。

 

当該車輌は一定レベルの防弾仕様(一定の拳銃弾に抗しうる程度)が施されていた。大使館にはより防弾レベルの高いメルセデス・ベンツもあったが、被害車輌はこれに比して人目を引きにくく、かつ悪路での走行時も含めた機動性の面で、より優れていることから当該車輌が選択された。

 

一行には警護車両及び武装警護員は同行しておらず、防弾チョッキ、ヘルメットは携行していなかった。イラクの現下の治安情勢の下では、安全確保のための黄金律は存在しない。

 

すなわち、警護車両及び武装警護員を同行させたり、防弾チョッキやヘルメットを着用することで安全確保や抑止力が期待できる一方、これらにより要人が移動していることを示唆することで却って狙われる恐れもあり、目立たないよう、1台で高速で走り抜ける方が安全な場合があるとの判断もあり、今回もこうした考えに基づいた措置が執られた。

(後半に続く)

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