玉鋼

産業

山陰に発達した日本独特の製鉄法『たたら』は,良質の鉄,玉鋼(たまはがね)を生み出します。玉鋼を用いて作製された日本刀は,強度が高く,靭性,耐食性に優れています。一般に鋼の性質は微視的構造に大きく左右されます。すなわち,『たたら製鉄』は,島根発の伝統的ナノテクノロジーと考えられます。

日本刀の原料である玉鋼は高純度の鉄ですが,鉄に溶け込んでいない介在物が多数存在しています。玉鋼を重ね合わせて鍛造するという工程を繰り返す事によって,介在物がマイクロ~ナノレベルまで微細化します。このとき,介在物の結晶構造が崩れ,ガラス化していきます。

 

また,玉鋼中に残っているTiなどの合金元素もガラス化した介在物に取り込まれる傾向にあります。そのような微細介在物が日本刀の特有の性質に影響を与えています。

日本刀に限らず,材料研究では原子尺度のミクロな視点からマクロな平均的な視点まで,全体的な視野で観察する必要があります。一般に「マルチスケール」と言われているもので,最近の研究では様々な手法による試料の測定および全体的な解析が求められます。

材料分野ではマルチスケールでの結晶学的研究のため,表面の凹凸の定量評価が可能な光学顕微鏡から結晶方位解析と組成分析が同時に自動で行える電子顕微鏡まで,様々な装置を導入しています。

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