中学校における教育の「効率性」にかかわる要因分析(松永 哲弥)教育基本法では、教育の目的は「人格の完成」を目指すとされているが、教育成果として、学力以外の「人格の完成」にかかわる要素に関係する要因を実証的に分析する例がほとんどない。
本研究では「人格の完成」に認知能力と非認知能力が関係しているとの前提に立ち、教育成果として認知能力(学力偏差値)だけをみる場合【モデル1】と認知能力と非認知能力(協調性、外向性、開放性、自律性を数値化した合成変数)を複合的にみる場合【モデル2】の2つの場合を比較し、両者の「効率性」の差異を検証する。
小原・大竹(2009) は、教育成果とは単に学齢期のテストの点数や教育年数だけでなく、非認知能力や体力、より長期的には生産性、すなわち賃金も含まれるとしている。
戸田・鶴・久米(2014) は、近年の研究では、学歴や雇用形態、賃金などの労働市場における成果は、IQ に代表される認知能力だけでなく、非認知能力が影響を与えることが明らかになっている、と指摘している。
ここでいう「非認知能力」とは、忍耐力や勤勉性、それに加えて外向性などの人の性格・特性のこととしている。ここでいう「非認知能力」とは、忍耐力や勤勉性、それに加えて外向性などの人の性格・特性のこととしている。
Emma Garcia(2014)は、非認知能力は、教育やより一般的には人々の生活において、中心的な役割を果たしているにも関わらず、教育研究や教育政策はその重要性を見落としてしまってきた。
それゆえに現在のところ、学校や教育政策の中で非認知能力を育む政策はほとんどない。また、非認知能力は重要であり、その発達には家族や社会の特色、学校における指導や人とのふれあいが関わっており、学校で育てることができる。そのため、公教育のゴールが非認知能力の発達である、としている。
教育の目的が「人格の完成」である以上、教育成果として、認知能力だけでなく、非認知能力も同時に高めていく必要がある。効率的な教育成果の実現を考えたとき、認知能力の「効率性」に関係する要因だけでなく、今まではあまり注目されてこなかった、非認知能力の「効率性」に関係する要因も重要となってくる。
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