税金の徴集なくして近代国家は成立しない。つまり近代国家は「租税国家」でもある。租税の必要性をもたらしたのは、火器や船といった軍事テクノロジーの革新といってよいだろう。言い方を変えれば、近代国家は戦争を遂行するための軍事システムとして誕生したことになる。
17世紀末から19世紀初のナポレオン戦争まで、イギリスはフランスとの戦争に勝ち続けた。フランスは人口がイギリスの4倍あり、経済力もだいたい4倍あった。にもかかわらず、戦争に勝てなかったのである。このパラドクスを説明したのが財政軍事国家である。
イギリスはフランスとの覇権争いのために軍事費を増大させた。一人あたりの税額はイギリスはフランスの2倍近かったといわれている。それだけの徴税が可能であったから、対仏戦争に勝利できたのである。
かつてのフランスのイメージは、強力な絶対主義が実行された国家で、民主主義の進んだイギリスと比べればはるかに重税を課す国家というものであった。しかし、イギリスこそ重税国家の典型であった。フランスは近代的な官僚制の発展が遅れたために、まともに機能する徴税システムが存在していなかったのである。
コメント