中世の貧困層の暮らし

生活

貧困層の悲惨さも、近世・近代の都市の労働者に顕著だったもので、中世では農奴は土地の生産物で食っていけるし、職人たちはギルドで守られ、都市の貧困層は修道院へ行けば、その日の糧を恵んでもらえた。富裕層は、貧困層への慈善を行うことが天国への道(「金持ちが天国に入るにはラクダが針の穴を通るより難しい」とされたため、積極的に寄進・慈善をしなければならない)と思っており、機会があれば喜んで行なった。

近世・近代では、都市の労働者は不況になれば、簡単に職を失い路頭に迷うことになり、多すぎる貧困層に教会の慈善は追いつかず、社会福祉システムも未だ整備されていないため、ジャン・バルジャンのように飢えに耐えかねてパン一切れを盗むというのも物語の中だけの話ではないのである。

中世は残虐な世界であり、何らかの争いは日常茶飯事で、医療は未発達で、幼児死亡率は高く、特に黒死病などの疫病、飢饉、内乱、戦争などにより秩序が失われると略奪や盗賊が横行して地獄絵さながらに陥ることもあった。人の命は儚いものであり、人々は宗教にすがって死後の世界に期待をかけることになる。

しかし、戦争はいつの時代も悲惨なもので、歴史の上では、そのような災害・戦災が目立つが、長い時間の中では、むしろ稀な出来事であり、平和が維持されていれば、日曜は休みで、祝祭日は多く、労働時間は現代と変わらず、近世・近代よりも余裕があり、人々は各々の身分に合わせてだが、比較的安定した暮らしをしていた。

 

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