ところで、私達が使っているお金(貨幣)は、もともと、モノとモノとの交換を仲立ちするものに過ぎなかったのですが、いつの間にか、生きることの最終目標のごとくに君臨し、あらゆる社会的価値観を隷属させ、大小の権力をめぐりおこなわれる悲喜劇を動機づける特殊な存在として振舞うようになりました。単なるモノが、人々の崇拝の対象となることを「物神崇拝」と呼びますが、何かを拝みたがる習性は、人類以外の高等哺乳類には決して見られない一大特徴ということが出来ます。お金があれば何でも出来ると物心崇拝に身を窶す人は後を絶ちませんが、そもそも人は何ゆえに紙切れでしかない貨幣を崇拝しているのでしょうか?
貨幣について考えてみることは、動物としての人間を司っている癖(本能的行動特性)を見つめ、自分自身をより自覚的に制御する術を見つけたり、日々の生活において見失い勝ちな貴重なものに改めて目を開かせてくれるかも知れません。
「悪貨は良貨を駆逐する」とは、一つの社会で名目上の価値が等しく、実質上の価値が異なる貨幣が同時に流通すると、良貨はしまい込まれて市場から姿を消し、悪貨だけが流通するという「グレシャムの法則」のこと。
グレシャムの法則とは、金本位制の経済学の法則のひとつ。十六世紀、エドワード六世・エリザベス一世のもとで財務顧問を担当した貿易商グレシャムが唱えた経済法則で、エリザベス一世に提出した意見書にあることば。英語は「Bad money drives out good.」。
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